第24回認知症介護研究会

六車由実さんのご報告を聞いた。

神、人を喰う―人身御供の民俗学

神、人を喰う―人身御供の民俗学

「介護民族学」の可能性をめぐって−「方法」であり「学問」であり−と題しており、「介護民俗学」ってなになに??と興味をそそられて参加した。平たく言えば介護の現場の中で、高齢者の過去の経験、時代背景等を聞き取るという作業を通していくなかで生じる聞き手・語り手に生じる相互作用や語られた言葉・経験などあらゆるものを開かれてものとしていく、といった試みと解釈した。

作業療法でも、クライエントをよく知るといった目的で過去の聞き取りを行う手法が存在するが、それとは根本的に目的志向性のベクトルが異なっている。つまり何か改善を目指そうと意図するものではないのだ。そこは創発したばかりで六車さん自身揺れている印象もちょっと受けたが、〜療法が有するような目的志向性を介護民俗学がもってしまったら、おそらく介護民俗学ではなくなるのではないかな、という不思議な志向性を感じた。その場に押しとどまって何かがスパークするのを待つっていうような志向性とでもいうか。

六車さんは高齢者から聞いた話を本当に楽しそうに、また目に浮かぶように言葉巧みにお話くださったが、そういう六車さん(のような)特性も助けて、この介護民俗学は成立するんだろうなと思う。とにかく嬉しそうに熱心に高齢者の過去の話に耳を傾ける。治療に役立てるとかそういう目的ではなく、とにかくその話を聞きたいから耳を傾ける。そしてそれを記述して、それをどう役立てるかはよくわからないけど、何か役立つことも、喜んでくれることもある。そんな緩い相互作用が介護民族学のなかにはあるみたい。

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基礎作業学(作業療法学全書)

基礎作業学(作業療法学全書)

吉備国際大学保健科学部作業療法学科港美雪先生より頂戴した。港先生は第3章、第5章のあたりを執筆なさっておられる。