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障害学研究会関東部会 第55回研究会

日時 2006年12月16日(土)午後1時30分〜4時30分

場所 東京都障害者福祉会館 2階「洋室」
(最寄り駅 地下鉄三田・JR田町駅
地図 http://homepage2.nifty.com/pps/dd-3.html
電話 03ー3455ー6321 ファクス 03ー3454ー8166

タイトル:障害受容――リハビリテーションにおける使用法

発表者 田島明子さん(東京都板橋ナーシングホーム 作業療法士立命館大学
学院先端総合学術研究科院生)

司会者 未定

会費 1500円、学生 1000円

情報・アクセス 要約筆記、手話通訳、点字レジュメ(すべて現在手配中)
           
参加自由です。事前の申し込みは不要です。

参考図書 『障害受容――リハビリテーションにおける使用法』
http://www.arsvi.com/b2000/0608ta.htm で購入可能)

発表者から

できましたら、うえの冊子を事前にご購入いただき
お読みいただいたうえで、ご参加いただけますと
ありがたかったりします。
(当日も何冊か冊子持ってゆきますので、
研究会の際ご購入いただくことも可能です。)

皆様から様々ご意見賜れますことを
楽しみにしております。

以下、冊子の内容を再掲いたします。

第1章……「リハビリテーションの内在価値」について見た。具体的には、「能力主
義」と「障害価値」の関係軸上における「リハビリテーションの位置」を確認し、現
行の作業療法に内在する価値についての問題点を指摘した。つまり、作業療法の至上
目標は「適応」に置かれるが、「適応」概念は、「能力主義」を肯定し、「できな
い」ことの劣位を正当化しやすい概念であり、「できること」に向かう支援は、「ひ
との価値」を否定するという1点を根拠に否定されることを指摘した。そして、第1
章における批判的観点は、本論文を通底する問題意識であり、重要な視座となること
を「はじめに」において述べ、第2章から第4章における実証研究につなげた。

第2章……障害を有する人たちの「障害受容」に関する言説を収集し、分析を行っ
た。その結果、「障害受容」について違和を感じている障害当事者が少なくないこ
と、障害観は多様であること、また、肯定的な障害像・アイデンティティが形成され
た背景には、働く場、生活と権利が平等に保障された環境のなかで、他覚(他者の評
価)の提供や支え、対等な関係であれる他者の存在、社会的認知や評価があること等
がわかった。

第3章……リハビリテーション領域における「障害受容」に関する公式な言説の生成
と展開をたどることを目的とし、作業療法理学療法を中心とした学術誌8冊を選定
し、障害を有する人の受障後の心理過程に注目した論文を探し、1970年代、1980年
代、1990年代以降に分類し、年代ごとの論文内容の諸特徴を明らかにした。明らかに
なったことは、1970年代、1980年代はほぼ同一の路線を踏んできたと見てよく、結論
だけ言ってしまえば、この時期に、「障害受容」が支援の対象である(すべき)、
「障害受容」は支援できる、という2つの確証が成立したのではないかと考えた。し
かし、1990年代以降は、これまでの「障害受容」言説に対する異議申し立てが多く見
られるようになった。そして、それら批判的言説の共通性は、「訓練の流れ図」のな
かで用いられる「障害受容」に関するものであり、対象者の固有性に接触できないこ
とへの批判ではないかと考察した。

第4章……臨床の作業療法士7名に対し、「障害受容」の職場での使用について、半
構造的なインタビュー調査を行った。インタビュー内容は逐語録を作成し、それをも
とに分析を行った。結果を大雑把にまとめるなら、まず「障害受容」の使用状況が明
らかになった。その使用法を分析すると、セラピスト側にa「目的遂行の阻害感」と
対象者とのb「能力認識のズレ感」があり、bがaを誘導したときに「障害受容」が
用いられていることがわかった。そして、そうした使用は、専門性に肯定感を与え、
専門性の予定調和的遂行への期待感が含まれていること、対象者にとっては「身体価
値の転換」が軽視され、専門職が有する能力主義的障害観を内在化させようとする圧
力が含まれていることを指摘し、第1章における批判的観点との連関が見いだされ
た。一方、「障害受容」を、少なからぬセラピストが意識的に使用していないことも
明らかとなった。その理由を大まかに言うなら、セラピスト自身に既述の使用に対す
る違和や不快があったということだ。そして代わりにセラピストから支持されたのが
「障害にとらわれず楽にいること」であった。筆者はそれを「障害と/の自由」と表
記し、それは、セラピストの「他性の否定」を不快と思う「私」の感覚から支持され
ていると述べた。他には、「障害受容」の理論として有名な上田の理論の問題性の指
摘等もしている。

第5章……第1章から第4章までを融合させた考察を行った。①「障害受容」そのも
のについて、②「障害受容」の使い方、③「障害受容」の方法論・支援論、の3つの
視点から論点整理を行った。第4章における指摘は主に②についてであったが、その
他、①については、これまでの障害受容論に見られる「個人の変容にのみが期待され
る」ことの問題性(人を無力化する)、「他性の否定」を不快と思うセラピストの
「私」の感覚が「障害受容」を不快と思うこと等、③については、「障害受容」の支
援法の不明性、リハビリテーションのアプローチ法と障害受容の支援法との関係性に
ついての不明性等が指摘された。最後に、第4章にて提起された「障害受容」に代わ
る「障害と/の自由」概念について、既述から関連が見出された、①できないことの
表象、②個人の変容の閉塞感、③他なるもの、について論考を加え、それら接線の接
点から素描を行った。そして最後に、「障害受容」のなかには再生のエネルギーの根
源が見出せないこと、「他なるもの」こそがすべてのエネルギーの根源であり、エネ
ルギーは、内在的障害観(別様の世界の感受の様式)、内在的障害観ー外在的障害観
の交通可能性のなかにあること、「障害と/の自由」は、「他性の肯定の感覚」をそ
の根本において支持していることから、私(あなた)の生のエネルギーの生起を支持
しており、それは、内在的障害観、別様の世界の感受の様式を肯定していることにな
り、それゆえに、対象者の便利さや快を優先させた視点が成立するのだろうと述べ
た。「おわりに」において、「障害受容」は、(少なくとも)リハビリテーション
全過程において廃棄されてよい、すべき概念である、と結論づけた。