最近読んだ本・読んでる本

川口有美子他『在宅重度障害者としてのALS患者の実態とニーズに関する研究』
三重野卓『「生活の質」と共生』(白桃書房
熊倉伸宏他『障害のある人の語りーインタビューによる「生きる」ことの研究ー』(誠信書房
清水哲郎『医療現場に臨む哲学』(けい草書房)
コア・エシックスNo2

やはり「QOL」という概念。いろんな分野にまたがって使われるから、リハ業界なんかでは昨今は「健康関連」QOLとか言ったりしてる。総合リハという雑誌で最初に取り上げられていたのは、確か上田敏の論文で「ADLからQOLへ」というようなタイトルだった。1984年だったか。自立生活運動の思想を受けて、自立ではなくて、生活の質なんだ、と。リハの着眼点の変化を促すものだった。そこにはやはり、障害を実際に有する人たちとのポリティクスの後押しがあったと言える。つまり1つに、「できること」の位置が問われ、もう1つは、還元主義的見方への批判(で、全人的に向かう)、あるいは、御本人の主観的満足度への着目、など。しかし一方で、それを言うことで、リハにとってお得なこともあった。1つは、障害当事者のリハに対する批判的言説との整合性を持てる、もう1つは、そう言うことでリハ対象の拡大化(高齢者等の慢性疾患の人たちもターゲットに含めることができる)が期待できる、など。それは、「地域」などという言葉とも関連してくるだろう。対象の拡大だけでなく、領域の拡大化も含まれていることになる。とはいえ、対象者の「QOL」が真剣に考えられるようになり、「QOL」という語が含まれた研究というのは、あまたある。しかしその概念自体の整理もまだ十分ではないというが現実のようで、「QOL」という言葉を使い、こっちとあっちで、ちょっと違うことを言ってるなんてことがある。つまり、「QOL」というのは、「政治的」な水準においても検討されるべき概念であると同時に、だれもがそれは人にとって大切そうだと感じつつも、メタ的視点においても、現実を見渡しても、多様な価値に翻弄されやすい概念だということなんだろう。