施設はやっぱりこわいのよ〜

こういうことは結構あることなのだが、今回ばかりは人の生き死にも関わる事態であり、やはり書き留めておくことにする。私の患者さんでもあるKさん(男性、70代)は、とてもわがままで、とっても口が悪い。ましかし、私のところはリピーターさんでもあり、そこんところの事情はよく心得ていたし、根はやさしく、良識のある人であることも知っている。ただ3年程前の前回利用に比べると、少し、短気さと頑固さが増してるな、と思った。肺気腫でしばらく入院していたこともあり、体力の消耗は著しい。以前も決して太っていたわけではないが、さらに痩せてしまったようだ。そんなことも相俟ってか、注意・集中等、精神機能の粗雑さも以前に比べ増している印象は受けた。肺気腫の再発はいつ生じてもおかしくなく、体調変化はいつも注意深くみていた。それが今月末頃から、息があがって、フルタイムの訓練が難しくなってきて、1週間ぐらいして、微熱がでてきて訓練を欠席するようになった。ベットにいくと、顔色がものすごく悪いKさんがいる。いつもは悪たればかりついているKさんが、息ぐるしそうに、しゃべるのも億劫そうに、でも、私に気を遣って話してくれるのが見てとれる。「大丈夫?」と聞いたか聞かないかは覚えてないけど、「検査もしてくんねーし」「とにかく、具合悪いっていっても薬くんないんだよ」「今日、ようやく抗生物質くれて」「このままここいたら、殺されるわ」と。そっか、まとにかく、今、余程苦しい状況で、まーでも職員の対応がそんなに杜撰なはずもないから、Kさんはわがままなところもあるし、ま、Kさんの言うとおりには対応してくれなかったのは事実なんだろうけど・・・。と思いつつ、Kさんの主観的現実に歩調を合わせ傾聴して、「とにかく今、身体が菌と闘ってんだから、負けるな」とおよそ専門家とも思えぬ励ましをして、これ以上消耗させないようにと、帰った。それから1週間弱ぐらいして、「今朝になって急に抜けたよ」というKさんの発言がありほっとしたのだが、その後のKさんのケース会議での他職種の発言を聞き、愕然とした。Kさんについて、「とにかく職員に話しかけてくるが、訴えや他患者の文句ばっかり、こちらの言うことも聞かないし、服薬もしっかりしてるかどうかわからない。本人に聞くと、ちゃんとやってるから大丈夫だよ!と一蹴されてしまうので、確認もとれない。今回の具合が悪いという訴えも本当がどうかわからない。妻がこないと悪くなるようだが、妻がくるとよくなっているように見える。だから、今回の具合が悪いというのも、まんざらウソではなさそうだが、本当のところはわからない」、と言うのだ。しかも、Kさんの心理状況について、例えば次のように分析する。他の利用者には本人のプライドがあって話したがらないようだが、人との交流は求めているようで、職員である私たちには話しかけてくると。腹立たしい言い方だ。職員であるアンタ方は、利用者とは人間的な感情交流を結ぶことなどあり得ない上流階級のお方とでも言いたいのかい?他にも、服薬の約束を守れないことを「Kさんにはそんな能力がないからしょうがない」と。こんな話しを聞き、Kさんの言ってる意味がようやくわかった。Kさんのいうとおり、ほんとに「このままここいたら、殺されちゃう」んだわ。こんなにも信頼関係が希薄ななかで、こんなにも信頼関係の構築の失敗を不問にして、自分たちのプライドだけ満足させればよいと、勝手に、自分たちの都合の良いように、Kさん像を創り上げていく。しかも自分らは一段高いところから、馬鹿扱いし、感情的交流を結ぶに値しない人間として扱い、本人の病いの辛ささえ、疑いとともに放りだされてしまうのだ。