認知症

今後、先端研で認知症が流行るのかどうかはようしらんが、小澤勲さんの認知症本を買ってみた。まだ読んでないので、今、とりあえず臨床での印象を書いといて、後で比較してみよう。最近の患者さんだと、Nさん。OTにきたそうそう、眉間にしわ寄せ、泣きそうな顔して、「お父さんは、帰っちゃうの〜?」と耳にたこができそうなほど繰り返された。その次来たときには、車いすのアームレストのところに「あしたまたくるよ」と書かれてあるテープが貼られていた。ご家族の方が貼っていかれたらしい。しかしテープもむなしく、OTにくると、「お父さんは、くるぅ〜?」
と悲壮な顔をして聞かれる。私が、「うん。今日は午後くるみたいよ。」というと、「そう」と言い、落ち着く。「お。落ち着いた。」と思っていると、3秒くらいして、「お父さんは、くるの〜?」と聞いてくる。最初はその応酬で、作業活動の導入もなかなか難しかった。し、かなり単純な作業であるネット手芸を導入しようと試みても、「私には無理です」とあっさり断られてしまう。結構キビシそうだなぁと思っていたが、確か1、2週間ぐらいすると、まあいつもの調子で「お父さんは、くるの〜」と聞かれはするのだが、悲壮感がやわらいできた感じがあった。作業活動も、最初は端から「ダメです」「ご迷惑になりますんで」だったが、やってみると案外できて、そのことを言語化してフィードバックすると、まんざらでもないという様子になってきて、しまいには、私が横に付き添ってはいたが、結構なスピードで行えるようになっていた。しかし相変わらずお父さん攻撃は続く。というよりか、この止めどない反復会話が妙に楽しいんだけど。で、一度、「そうか。Nさんが、お父さんお父さんってそんなにいうぐらいだから、お父さんはとても素敵な方なのね。」と言ったら、俯いて、首を横に振っていた。あ、あら。お父さんちょっとかわいそう。一度困ったのは、同じ時間に訓練に来ていたKさんが、私がNさんを落ち着かせるたびに、蒸し返してくれたとき。「お父さんは〜、お父さんは〜」と聞かれる度に、「だいじょぶよ。だって毎日きてくれてるでしょー。Nさんのお父さんなんだか、信じてあげなきゃー」とかなんとか言って落ち着かせると、Kさんが横から、「お父さんは、ここにはこないわよっ。」と言う。そうすると、Nさんが脇にいる私の顔をみつめ、「ほんとぅ〜?」と聞いてくる。私が焦りながら、「ここにくるかはわからないけど、必ず来てくれるよ。」と言うと、また落ち着く。そうするとKさんが再び、ってことが何度も続き、周囲も笑ってたが、私がとうとうしびれをきらし(てたんだな)、「あのね。Kさん。Nさんの気持ちを不安がらせるようなことを言わんように!」かなんか言ったら、Nさんが「やっぱりウソだったのねぇ〜〜〜」と言われたときにゃ、かなりしどろもどろになっていた。でも、そんなこんながが続いてくると、少しずつ何かが残ってもくるらしく、送迎をする介護職員に「ありがとうございました」と丁寧に礼を言い、私にも「よろしくお願いします」と言ってくださるようになっていた。でもそこから、「お父さん、今日、くる?」と始まるんだけど。あとは、今の患者さんだと、Kさん(女性)。Kさんは、しかし、おもしろい。見た目を表現するなら、なんだろなぁ。超おっとりしたドラミちゃんか。学習能力などは、ほとんど退化してるから、2手順以上の動作を覚えるということは、ない。だから、車いすから椅子に移るときも「ブレーキ忘れないで〜」「ほら足台あげなきゃ〜」とまいどまいど言うている。そんなKさんだが、絵を描かせるととてもじょうず。ディテイルもよくみて、図形模写などは正確に描く。「家ではやたらと絵を描いてました(へらへら)」とおっしゃっていたが、OTではやたらとぬり絵をしてもらっている。そろそろ別のアクティビティを導入せねば、多くの患者さんであればそろそろ目つきが悪くなってくる頃だが、Kさんは、まるで、Kさんの周りだけそよ風が吹いているかのごとく、72色の色鉛筆を相手に、わが世界を創り上げていく。そういえば、この間、フロアに送る最中、Kさんが、「あの〜、私、お花見に行きたいんです」と。これはKさんの発する言葉。「もしかして、お手洗い、行きたいんでかー?」と聞いたところ、「あ、はい。そうなんです。」と。うーん。さすがです。宇宙人Kさん。