ALS本書評

とりあえず、OTの論文誌に、宣伝しようと思って書いた。
採用されるかは知らん。ごめーんって、かんじ。

社会学者の立岩真也が書いた本。医学書院から出ている「シリーズ ケアをひらく」の10冊目。文献、索引含め、451ページという分厚い本だが、読み進めることができ、かつ、読んだ方がよいと思うので紹介する。
この本の多くは、ALS患者自身、あるいは家族の言葉である。この本のまずよいところはそこで、だから「ALS」をめぐるリアリティがこの本のなかに凝縮されている。
「ALS」というと、進行が早く、あっという間に身体の自由が利かなくなり、あっという間に死んでしまう、というイメージが私のなかにはあったのだが、「人口呼吸器」を装着することで、かなり長く生きることができることをこの本を通して知った。そして、着ければ(ほぼ)確実に生きられる「人工呼吸器」なのに、装着せずに死を選ぶ人の方が多いこともこの本を通して知った。
その上で、著者は次のように問う。「たしかにALSというのは大変な病だが『自ら死を選ばざるを得ない』ほどの理由が一体どこにあるのだろうか」と。そして、死と生をめぐる膨大な量の当事者の言説に揺られ、そのことを考え続ける。様々な論点が浮かび上がるが、それらはどれも大切で、素朴で、単純である。だから、読み手も、著者の思索に深くコミットしながら読み進むことになる。
例えば、川口武久というALSの人のことが書かれている。彼は、ALS患者が生きるための支援を、それこそ自分の身体を顧みずした人だった。しかし、自分は家族とも別れ、病院でひとりで、人口呼吸器を着けずに亡くなった。生きたかった、なのに、それを選ば/べなかった。著者は、川口の死と生をめぐる言説をたどり、たったひとりのALS患者の命をも留め置くことのできないこの社会を、静かに、そして鋭く批判する。」